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背びれ撫でる春 〜行光からの三通目の手紙〜

さらに数日が過ぎた。

季節外れの雪は長くは続かず、溶けた水は土に染み込み、また春が顔を出した。

薩摩の本丸の審神者・ギョリイは、その日珍しくさつまおいも畑やモロコシ様畑ではなく、本丸ガーデンにいた。なんだか近々、行光が帰って来そうな気がしたのだ。その時に花いっぱいの庭だったら、きっと喜ぶかもしれない。そう思って、小さな苗を一つ一つ植えていく。

∈(👁️___👁️)∋ここに黄色い花……こっちは白い花っぺ……

今日の近侍は姫鶴一文字。

縁側に腰掛けた姫鶴は、どこか気怠げに脚を組み、花を植え続ける主をぼんやり眺めていた。

「へえ……今日は畑じゃないんだね…珍しい」

∈(👁️___👁️)∋なんだか、行光がもうすぐ帰って来そうな気がするっぺ

「ふーん。ナマズオ的予感ってやつ?」

∈(👁️___👁️)∋姫っぺ!そうっぺな♪

姫鶴は肩をすくめ、小さく笑う。

「無事に帰ってくるといいね…」

そのとき、庭の空気を切るようにナマズオ型式神が舞い降りた。

ひらりと落ちた白い文。

──行光からの手紙。三通目だった。

ギョリイは手袋を外し、少し土のついた手で封を開ける。

姫鶴も、縁側から身を乗り出した。

『安心してくれ。俺は、裏切り者にならずに済んだ。

俺が良からぬことを考えていることを、当の信長様に非難されたよ。

もちろん、俺からは何も言っていない。でも、見透かされていた。

失った過去の代償に現在の自分を犠牲にして、それでいったい何が面白いんだ?

……だってさ。

そこまで言われてしまったら、もうなにもできないよ。

だから、もう過去ばかり見て、現在を無駄に過ごすのはやめるよ。

恐怖はまだ消えてない。でも逃げてちゃいつまでたってもそのままだ。

今の俺は貴方の剣。

貴方の本丸が焼け落ちぬよう、どこまでも強くなってみせるさ。』

∈(👁️___👁️)∋✉️✨✨✨

ギョリイは文を胸の前でぎゅっと握る。

春の風が、庭に植えたばかりの花の苗を揺らした。

∈(👁️___👁️)∋そろそろ帰って来そうなナマズオ的予感がするっぺぇぇぇ〜❣️

姫鶴は立ち上がり、庭を見渡してからふっと笑った。

「へえ。じゃあ、いいタイミングじゃない。帰ってきたときに花だらけの庭ってのも悪くない。……ま、驚く顔はちょっと見てみたいけどね」

春の光が、本丸ガーデンいっぱいに広がっていた。まるで、帰ってくる一振りを迎える準備をしているかのように。



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